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脂肪組織の低酸素誘導因子と糖尿病

肥満による糖尿病は、心血管合併症を引き起こすため、人々の生活の質を著しく低下させます。肥満糖尿病の発症には、脂肪組織が肥大化することにより機能異常を来すことが関係しています。最近の研究で、肥満により肥大化した脂肪組織が低酸素状態となっていることが明らかとなってきました。当研究室では、肥満に伴う脂肪組織の低酸素化が、脂肪組織の機能変化にどのように影響するかを研究しています。

近年、肥満により肥大化した脂肪組織は低酸素状態となっていることが明らかとなってきた。肥満による糖尿病の発症には、脂肪組織の機能異常(代謝異常や炎症)が関わっていることが知られているが、脂肪組織の低酸素化が、その機能異常にどのように影響しているかは不明な点が多い。
細胞の低酸素応答の主要因子として、低酸素誘導因子(HIF)-1αが知られている。HIF-1αは、通常酸素圧下では、ユビキチン-プロテアソーム系により分解されているが、低酸素環境下では、分解されず、核内に移行し、標的遺伝子を活性化する。HIF-1αの標的遺伝子には、糖代謝、炎症性サイトカイン等が含まれており、肥満に伴う脂肪組織の機能異常に関与していることが予想される。
当研究室では、脂肪細胞特異的HIF-1α欠損(KO)マウスを作製し、脂肪細胞のHIF-1αが肥満糖尿病の発症および進展にどのように関与するかを解析している。
これまでの結果から、高脂肪食負荷により肥満を誘発したKOマウスでは、血清中のアディポネクチン値が上昇しており、また、インスリン、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)の値も上昇していることが明らかとなった。また、培養細胞系を用いた解析から、アディポネクチンがGLP-1分泌を促進することを明らかとした。
GLP-1は腸管で産生され、膵臓に働き、インスリンの分泌を促進する。脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンが、GLP-1分泌を促進することを発見したことから、脂肪、腸管、膵臓が連携し、全身の糖代謝を制御することが示唆された。

徳島大学・大学院
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