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食原性亜硝酸由来の一酸化窒素(NO)産生系の
生理的・病態生理的意義

野菜は土壌中のアンモニウム塩や硝酸塩からアミノ酸・タンパク質や核酸を合成し、私たちはそれらを日常的に摂取していますが、植物中には原料となる硝酸イオンも残っており、ヒトは1日当たり野菜から約75mgの硝酸イオンを摂取しています。また体内の代謝によって、ほぼ同量(40-70mg)の硝酸イオンが生成することから、
血液中には約40μMの硝酸イオンが常に存在しています。
ところで血液中の硝酸イオンは尿として排泄されますが、一部は唾液腺に集められ、唾液中に高濃度(1mM)で
分泌されます。口腔内の硝酸イオンは舌の奥に棲む嫌気性細菌によって亜硝酸塩に還元されて胃の中に入ることが知られています。これまでの報告によると摂取した硝酸イオンの5~25%が亜硝酸イオンになることから、我々は野菜を摂取すると同時に亜硝酸イオンも同時に摂取していることになります。
胃の中に入った亜硝酸イオンは酸によって分解を受け一酸化窒素(NO)を生成することは知られていました(J. Biol. Chem. 2001; 271: 1551)が、その代謝および生理的意義の解明はこれまでほとんど行われていませんでした。それは体内のNOが酵素(NO合成酵素(NOS))由来か食原性の亜硝酸イオン由来かを区別できなかったためです。
ところで赤血球の中にはヘモグロビン(Hb)があり酸素を運搬していますが、NOは酸素よりもHbに結合しやすいため、血中に放出されたNOは直ちにHbと結合し、その一部はニトロシルヘモグロビン(HbNO)として存在しています。
自然界の窒素元素の0.4%は15Nという安定同位体として存在していますが、15Nのみからなる亜硝酸イオン(15NO2−)から作られる15NOをHbと結合させて出来るHb15NOは、電子スピン共鳴装置(EPR)で測定すると、通常の窒素元素(14N)からなるHbNOと明確に区別できることを見出し報告しました(Am. J. Physiol. 285, H589, 2003)。
そこで実験用動物に15NO2−を投与して、その血液をそのままEPR装置で測定することにより、これまで不明であった食原性亜硝酸由来のNOによる生理的・病態的意義が明らかとなってきました。

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徳島大学・大学院
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