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腎および脳虚血再灌流時における
亜硝酸由来NO産生系の生理的・病態生理的意義

腎臓は血流が豊富な臓器であり、腎臓への血流が何らかの原因で低下(虚血状態)すると腎臓は容易に障害を受ける事が知られています。ところで血液中には硝酸イオン、亜硝酸イオンが一定量存在し、また腎臓中には亜硝酸イオンが血中よりも高濃度(69μmol/kg)に存在することが知られています。
亜硝酸イオンは強酸環境下(pH<3.2)で酸分解を受けてNOを生成しますが、腎虚血時に組織のpHは6.5程度までしか低下しません。また低酸素環境下では酸化還元酵素やデオキシヘモグロビンによってNOを生成することが試験管実験では報告されていましたが実際に動物の体内で証明された報告はありませんでした。そこで予め15NO2−を投与した実験用動物の腎臓の血流を遮断したところ、腎虚血時には腎臓中に投与して血中に存在している亜硝酸からNOが生成し、腎臓の駆血を止めて再度血流を回復させる(再灌流)と腎臓中のNOは血流に乗って全身に移行することを初めて見いだしました。また、虚血時の腎組織における亜硝酸イオンからNOへの甘言は、主にキサンチンオキシダーゼという酵素によって行われていることを明らかにしました(,Am J Physiol 288, F182, 2005)。
NOは強力な血管拡張作用を持つほか、再灌流時に大量に発生する活性酸素種を消去することから、虚血時のNOは正常時に増してその必要性は高まっていると考えられます。生体内では通常、L-arginineを基質として酸素を使ってNO合成酵素からNOが生成しますが、虚血時には酵素によるNO生成は期待できません。
亜硝酸イオンからのNO生成は、この欠点を補う絶妙な仕組みと言えます。

徳島大学・大学院
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