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血管リモデリングにおける
平滑筋細胞由来低酸素誘導因子の役割

近年、生活習慣病が社会問題となってきています。糖尿病、脂質異常症、高血圧に伴う動脈硬化の進展は、脳梗塞、心筋梗塞、大動脈瘤、大動脈解離など致死率の極めて高い疾患の発症に関与します。
通常の動脈は、内膜(内皮)、中膜、外膜の三層構造をとりますが、動脈硬化が進展すると、内皮機能の低下、血管への炎症性細胞の浸潤、脂質沈着によるプラークの形成、血管平滑筋細胞の増殖、弾性繊維の異常、血管線維化などが認められ、血管のリモデリングが起こります。血管リモデリングが過剰に形成されると、血流や血圧に影響を与えるばかりでなく、さらなる慢性炎症、血管構造の破綻に繋がり、心血管病発症に至る恐れがあります。
血管を構成する細胞の中でも、中膜に主に存在する血管平滑筋細胞は、血管壁中膜肥厚や血管の線維化、慢性炎症下では炎症性サイトカイン分泌などに関与することが知られており、血管リモデリングにおいて重要な役割を担っていると考えられています。
一方で最近、細胞増殖や線維化、慢性炎症などに関与する転写因子、低酸素誘導因子(HIF)-1αが注目を集めています。HIF-1αが、がんや代謝性疾患などの病態形成に関与するという基礎研究の報告が数多くなされています。心臓や腎臓などをはじめ、循環器系疾患の分野でもHIF-1αは注目されてきていますが、血管リモデリングにおいて細胞種毎にHIF-1αの役割を解明した報告は極めて少ないのが現状です。
当研究室と共同研究を行っている徳島大学心臓血管外科において、T細胞のHIF-1αはカフ傷害による血管リモデリングや炎症に対して抑制的に働くこと (Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2010)および、マクロファージ由来HIF-1αはガイドワイヤーによる血管傷害後の新生内膜形成に関与すること (Cardiovasc Res. 2013)が報告されました。当研究室では、次に血管平滑筋細胞に着目して、平滑筋細胞特異的HIF-1α欠損マウスを作製し、angiotensin II誘発血管リモデリングにおける平滑筋細胞由来HIF-1αの役割について検討を行っています。

徳島大学・大学院
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